240410wed

17℃ 快晴

今日は休みの日で特に予定がなかった。

アトリエでこれまでのフォルメンを眺めていて、そろそろ次の段階に、いや、まだここに留まって量産すべきなのか?とぼんやりした。

朝食は、昨日の残り物のひじき煮と、温奴とわかめのお味噌汁と山葵納豆とキムチとししゃも3尾と麦ごはん。

風呂場にてカビ予防の煙を炊く。

 

書棚を整理し、福永武彦『廃市・飛ぶ男』を取り出す。福永武彦は10年近く前に『草の花』を読んだっきりでその後一度も本を開いたことがなかった。

幹をなしていたのは、彼の絵が彼という人間に対して持っている意味だった。彼、――彼は学業を中途で止め、好きな絵を描くことに熱中した。その彼がもう二十年近くもこの一筋の道に縋りつきながら、依然として貧しい無名の画家にすぎず、嘗て一枚の絵も売れたことはなく、今まで二度ほど開いた個展も何等の反響を呼ばず、常に病気と生活とに追われて苦しんでいるのは何のせいなのだろうか。それは彼が親の意志に背き、自ら窮乏を歩み、生来の人嫌いと頑固さとを失わず、進んで人に頭を下げることをしなかったためなのか。

福永武彦『廃市・飛ぶ男』「樹」p205-206)

 

ほっほーん???あたくしこういうカタにはまった芸術家像だあいっっきらい!!!と思って読み進めていたら、そのクソまじめで不器用で頭が堅くて辛気臭い面下げた絵描きが妻から離婚を切り出されていて同情した。とはいえ芸術への情熱があるばかりでなく、家庭を持つ喜びと責任までも経験できたんだから、そんじょそこらの人並み以上に豊かな人生(豊かな失敗)じゃ〜ん☆オッケ〜〜☆☆人生経験豊か〜〜☆☆☆人生長いから奥さんに逃げられても一人で自炊して強く生きていけよ!あと被害者みたいな顔してんじゃねえバーカ!!と思った。それにしても筆致が暗すぎる。人生の悲哀ってそのまま人生の豊かさだなー。あー悲しい悲しい(棒読み)

↑久しぶりにアホみたいに暗い文章読んでびっくりした感想です。自分は昔は暗い文章が好きだったんだ。

てか絵を売りに出していて本当にマジで一枚も売れないとかありうるか?だいたい活動初期の頃は知り合いか何かがお情けで買ってくれたりするもんじゃない?そのへんリアリティないよな。別にリアリティなくてもいいけどさ。幸薄くて不器用な絵描き萌えってやつなのか?

 

Appleの学生新生活キャンペーンが今日で終わるということで、満を辞してipadをポチった。ipadを初めて入手するが、たんに描画作業効率化のためなのであまりワクワク感はない。

デジタルで絵を描くことに慣れていっても、それを自慢する類の薄っぺらいナルシストクソバカにはなるまいと思った。自分はどちらかというと、自分で顔料から絵具を作ることに五感で喜びを感じるプリミティブ方向への志向を持つ。デジタル作業は食っていくための余剰スキルだ。

 

おやつの時間に、業務スーパーで1年前に買った冷凍パイ生地を解凍しさんかくに切り分け、チョコとバナナを包んでパイを焼いた。普段忘れ去られているオーブンレンジのオーブンの部分(下手くそな部分ツイートみたいになった)であるが、たまには何か焼いてみようと思ったのだ。できたものを写真に撮ってTにLINEした。「おいしそ」と返信があった。それでパイ作りには満足した。

夕食に卵焼きを焼いて、昨日の残りのひじき煮と、キャベツや豆を蒸して塩かけた温野菜サラダと、ししゃも2尾と麦ごはんを食べる。

20時ごろからレイトショー。自転車を漕ぎ、家の最寄りの映画館でDUNE二作目を観た。

うーん。画作りは素晴らしいんだけどストーリーに魅力を感じられない。掘り下げたり、何らかのシンボルとしてあれこれ解釈したいと思うほどの奥行きを自分は感じなかった。恐怖政治で回している敵側組織の、その迫力を出すための小細工演出がわざとらしすぎてペラいのが致命的だ。エンタメ作品。同じ壮大なドラマSFなら銀河英雄伝説みたいな思想対決と人間ドラマが好きだ。

「画作りは素晴らしいんだけど」と自分がこういう感想を持つときはたいてい、実は画作りの部分に対しても感心していないし、どこか他人事で、自分の好みではない。今風の3DCGでツルッとしていて視覚の快楽がない。例えば新海誠作品についてもそういうことを思っている。思うばかりでなく口に出して新海ファンに怒られたこともある。なぜ「個人の感想」を口にしただけで怒られるのか。その理由は、自分はそのとき接客中の身であり、件の新海ファンは客だったからだ。感情労働をこなすことこそ自分の任務、と思ってその時はヘラヘラ謝った。お金を稼ぐにあたっては、建前が大事だ。

 

帰宅して日付が変わってから明日の出社弁当用に2種類のおかずを作り、その後入浴した。

入眠のため、と思って温かい豆乳を入れたマグカップにダークラムの瓶の口を傾けたらドボドボッッと注ぎすぎてしまった。もったいないのでそのまま飲む。豆乳味のラムだ。顔が熱くなる。